作詞ベスト8入選作品
( 作曲ベスト8課題詞 )
以下の8作品の著作権は作詞者自身にあります。この作曲企画以外の詞の無断使用は固く禁じます。
独り 千葉 宏子
流れる歌を 聴きながら
駅裏路地の 止り木で
ボンヤリ更ける 夜もいい
はぐれてなんか いないけど
独り飲みたい 時もある
独り酔いたい 時もある
心に埋めた 歳月(としつき)を
辿れば胸が 熱くなる
伴れにも出来ず 触れもせず
俺には過ぎた ひとだった
遠く見守る 恋でいい
遠く愛しむ 恋でいい
流れる歌を ゆりかごに
いつか馴染んだ 止り木で
揺られて帰る 夜更け路
はぐれてなんか いないけど
独り優しい 俺がいる
独り温もる 俺がいる
函館駅は別れ駅 千葉 隆平
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別れのさみしさ 押しころし
大人の女で 送ります
あなたは明日から 東京で
もとの暮らしに 戻るのね
二年の恋が 終わります
函館駅は 別れ駅
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人目をしのんで 会う恋は
女をなおさら 燃えさせた
ホームを離れて 汽車が行く
私はポツンと 残される
こらえた涙が あふれ出す
函館駅は 別れ駅
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青函トンネル 抜ける頃
あなたはこの恋 忘れるわ
私は下りの 汽車に乗り
恋の残り火 消しに行く
北の最果て ノシャップへ
函館駅は 別れ駅
望郷旅がらす 高木 知明
流れ雲 追い越して 帰ろうか
ふるさとが呼んでいる 茜の空よ
意地で三年 はぐれて二年
男の夢も ほつれがち
落ち葉しぐれの 道中合羽
風がしみるぜ 峠道 あぁ泣くもんか
道端の軒先に ゆれている
柿の実はふるさとの 夕焼けの色
秋の祭りで 誓った娘(やつ)も
嫁いで遠く いったとか
どうせおいらは 薄情がらす
詫びる言葉も 旅の空 あぁ切ないぜ
渡り鳥 引き連れて 帰ろうか
お袋が待っている あのあぜ道に
畑相手に 出直す俺を
親父はきっと苦笑(わら)うだろ
赤い夕陽の お地蔵さんに
両手あわせる 峠道 あぁ泣くもんか
藍場川(あいばがわ) 田島 隆夫
たった七歩の 川幅なのに
何で渡れぬ 藍場川
いらぬうわさに 引き裂かれ
離れ離れの 萩の町
逢えば再び 逢えないようで
残り一歩が 踏み出せないの
流し雛の日 待ちきれなくて
恋文(ふみ)を浮かべる藍場川
橋のたもとに いるのなら
どうか見つけて 桟俵(さんだわら)
和紙に紅筆 愛しき思い
ひと目逢いたい お話したい
橋を渡れば あなたに逢える
思い切れない 藍場川
あの日あなたの お誘いに
添えていたなら 逢えたのに
一度もつれた 縁の糸は
解(ほど)けないのね うわさが憎い
板修行 佐藤 信幸
味は見て盗れ 聴いて盗れ
叩き込まれた この教え
中途半端じゃ 終われない
飯炊き仕込み 脇板と
忍のひと文字 板修行
いつか師匠(おやじ)を 超えてやる
こんな男に 飽きもせず
陰で支えて くれる女(やつ)
俺を信じて ついて来い
江戸前屈指の 花板に
なって見せるぜ もう直ぐに
敵は我なり 己なり
客をもてなす 心意気
刃先ひとつで 変わる味
師匠(おやじ)秘伝の 技を盗り
故郷に錦 飾るまで
意地のふた文字 板修行
決めたこの道 俺の道
なぁ、おやじ 寺倉 修造
拭(ふ)いてあげましょう 涙の粒を
此(こ)の世に残した さようなら
なぁ、おやじ… 家(うち)へ帰ろう
思い出話が 待つ部屋で
何処へも行かず 何処へも行かず
暮らそうよ
いつも日暮れを嫌っていたな
入り日につぶやき 想うのさ
なぁ、おやじ… 街を走ろう
主人(あるじ)をなくした車イス
玄関先で 玄関先で
ひとりぼち
閉(と)じて締まらぬ 涙の窓に
線香の煙が 揺れている
なぁ、おやじ… 寂しがるなよ
心配だろうが おふくろは
必ず俺が 必ず俺が
守るから
寒のもどり 内田 和美
起きて半畳 寝て一畳
か細いのどに 夢たくす
ギターうつ伏せ うたた寝すれば
諦めないでと おまえの声が
聴こえたきいた 夢一畳
桜つぼみを 置きカップ
おまえは挿して 出て行った
ひびく靴音 寝が入りうてば
見果てぬ夢追い 馬鹿だよ俺は
ひとすじ涙 耳ん中
寒のもどりか 冷えやがる
布団をかぶり 歌いこむ
酒をすすって ラジオをひねり
北国ふる雪 記録をこすと
あいつは無事か 胸騒ぎ
つぼみよひらけ 夢よ咲け
お吉情話 作詞 滝本 哲也
台詞(あの大(おお)きな船(ふね)はどこから来(き)たんだろうね。見(み)たこともない船(ふね)だよ。)
白波進む 異人船(しらなみすすむ いじんせん)
津波傷あと 残る下田に(つなみきずあと のこるしもだに)
お国の大事 奉公せよと(おくにのだいじ ほうこうせよと)
口説き文句に 流されて(くどきもんくに ながされて)
しょせんお吉は 波間の小舟(しょせんおきちはなみまのこぶね)
流れに竿は させませぬ(ながれにさおは させませぬ)
台詞(ただの奉公人(ほうこうにん)に、ハリス様(さま)は神様(かみさま)の教(おし)えを説(と)いてくれた。
どんな人間(にんげん)も、両親(ふたおや)から生まれ、生(い)きてゆく運命(さだめ)があるのだと…
ハリス様(さま)、人の道(みち)の教(おし)えだけは忘(わす)れないよう…)
早咲き椿 あだ花か(はやざきつばき あだばなか)
おんな一輪 咲くもならずに(おんないちりん さくもならずに)
異国の風が 骨身に染みる(いこくのかぜが ほねみにしみる)
なぜに冷たい 世間様(なぜにつめたい せけんさま)
しょせんお吉は 波間の小舟(しょせんおきちは なみまのこぶね)
あがらう術を 知りませぬ(あらがうすべを しりません)
台詞(鶴松(つるまつ)さんも、もう帰(かえ)ってこない。明日(あす)を生(い)きる望(のぞ)みも消(き)えた。
こんなお吉(きち)にどうしろと云(い)うのさ…お酒(さけ)…お酒(さけ)をちょうだい…)
うらぶれ歩く 夜空道(うらぶれあるく よぞらみち)
よぎる想いは 遠い日のこと(よぎるおもいは とおいひのこと)
こぼれる涙 酒にあずけ(こぼれるなみだ さけにあずけ)
あおる盃 なみだ味(あおるさかずき なみだあじ)
しょせんお吉は 波間の小舟(しょせんおきちは なみまのこぶね)
下田の町に 沈みゆく(しもだのまちに しずみゆく)
台詞(よせては返(かえ)す波(なみ)、あの波(なみ)はどこに帰(かえ)るんだろうね……
ハリス様(さま)も遠(とお)い国(くに)で逝(い)ってしまった。お吉(きち)は、今(いま)も下田(しもだ)にいるよ)